日本画って何に描く?パネル張りだけじゃない日本画の魅力

前回は日本画の筆について書きました。
では今回は日本画で「何に描くか」について書いていきたいと思います。
基本は水張りパネル
日本画では和紙を張り付けた木製パネルに絵を描きます。
日本画の授業で最初にやったのは水張りパネルを作ることでしたね。
水張りパネルとは、
木製のパネルに鳥の子紙っていう安めの紙を下張りして、その上から雲肌麻紙っていう高い紙を水張りしたものです。
下張りの手順をざっくりいうとこんな感じ。
- 木製パネルをよく水拭きする
- パネルの側面にのりを塗る
- 鳥の子紙の裏面に水を塗る
- 鳥の子紙が伸びたら裏面に水で溶いたのりを塗ってパネルに貼る
- 1日乾かす
- パネル側面の半分位を残して鳥の子紙をカットする
水張りの手順をざっくりいうとこんな感じ。
- パネルの側面にのりを塗る
- 雲肌麻紙の裏面に水を塗る
- 雲肌麻紙が伸びたらパネルに貼る
- 1日乾かす
- パネル側面からはみ出した雲肌麻紙をカットする
といった感じで結構時間がかかるんです。
面倒くさいですね〜。
基本はみんなこの水張りパネルで日本画を描いていました。
大学の売店でパネルを発注することができて、水張りまで終わっているパネルを買うこともできたんですがいかんせん値段が高いのです…。
貧乏学生にとって出費がかさむのは苦しいので、材料費を安く済ませるためにパネルから自作するっていうひとも多かったですね。
箔に描く
日本画では金箔や銀箔といった金属箔を使用することがあります。
箔は大学の売店にはありませんでしたが、画材屋さんとかでだいたい10cm角くらいの大きさで切り分けて売られています。
金の屏風とかを見てみると背景が四角く区切られているように見えますよね。
あれは切り分けられた金箔を1枚1枚貼り付けているからなんです。
一面にはられた金箔は迫力がありますね。
ただ箔は結構いい値段するので、うちの日本画の学生で使っている人は殆どいませんでした。
特に金箔は高くて10枚で3,000円とかします。銀箔の倍以上の値段でした。恐ろしや。
貼った箔の上からは絵の具をのせることもできます。
和紙に比べたら水を弾いて描きにくいかもしれませんが、膠でくっつけていく感じなので問題なく描けちゃいます。
箔はテッカテカに光るわけではなく、鈍くざらついた光加減で味があるんですよね〜。
紙の質感から変化をつけたいときは箔を背景にして描くのもオススメです。
和紙に直接描く
絵を描く上で描く以外の作業で時間がかかるってのはかなりストレスなんですよね。
水張りが面倒なので厚めの和紙に直接描いたこともあります。
厚めの和紙なら水をたっぷりつけてもでもそう簡単にちぎれない。
サラッと描くのにちょうどよかったです。
まさに浮世絵みたいな。
日本画のための和紙はドーサ引きというにじみ防止の処置をしてから描くことが多いんですが、あえてドーザ引きをせずににじませるという表現もあります。
自分の思うようににじみをコントロールするのは難しいですが、自然に身を任せて偶然できたものを楽しむというのもなんだか趣があっていいんですよね。
私が影響を受けたひと
三瀬夏之介という日本画家がいます。
東北芸術工科大学の日本画教授で日本画の発展のために広く活動している方です。
三瀬さんも日本画の手間がかかるという部分に疑問をいだいていたそうです。
三瀬さんの作品制作風景はこちら。
パネルは使用せず、ちぎってつないだ和紙に描いています。
三瀬さんの作品に出会ったことで私の日本画に対する考えが変わりました。
日本画って結構自由なんだなと。
まとめ
一般的に日本の絵画というと屏風、浮世絵、絵巻物など、意外とパネルに貼られた絵画っていうイメージは薄いんじゃないかと思いました。
私は大学で日本画をやってきて、かえって額縁で囲まれた絵画のイメージにとらわれてしまっていましたね。
だからこそあらためて日本の絵画の魅力に気づけたとも言えますが。
日本画は芸術品!美術品!近寄りがたい!っていうふうに感じている方は多いと思いますが、実際は素材なんて何でもOKな寛容さがあり、庶民的な一面があります。
浮世絵なんてまさに生活の中の道楽が根元にありますから、同じく日本の芸術文化である日本画もみんなに気軽に眺めて楽しんでもらえたらちょうどいいんだと思います。